アンダー・ザ・シルバーレイクは稀代のTシャツ映画である。※解説でネタバレしません

概要

『アンダー・ザ・シルバーレイク』(Under the Silver Lake)
公開:2018年10月13日(日本)
製作国:アメリカ
上映時間:139分

監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
製作:マイケル・デ・ルカ、クリス・ベンダー、ジェイク・ワイナー、アデル・ロマンスキー、デヴィッド・ロバート・ミッチェル
製作総指揮:ダニエル・レイニー、ジェフリー・コンビッツ、ジェフ・ジョフレイ、キャンディス・アベラ・ミカティ、アラン・パオ、ルーク・ダニエルズ、トッド・レミス、デビッド・モスコー
脚本:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
撮影:マイク・ジオラキス
美術:マイケル・T・ペリー
衣装:キャロライン・エスリン=シェイファー
編集:ジュリオ・C・ペレッツ
音楽:リッチ・ヴリーランド
出演者:アンドリュー・ガーフィールド、ライリー・キーオ、トファー・グレイス、ゾーシャ・マメット、キャリー・ヘルナンデス、パトリック・フィスクラー、グレイス・ヴァン・パタン、ジミ・シンプソン

あらすじ

舞台は、ハリウッドの東側、変な人達が多く住む地区シルバーレイク。主人公の”オタク青年”サム(アンドリュー・ガーフィールド)は、そこでだらだらと日々を送っている。ある日、不思議な魅力を持った美女サラ(ライリー・キーオ)が引っ越してきた。サムは心惹かれた。図らずも交流を持ったが、翌日、サラは姿を消す。この失踪にひっかかりを感じ、サムは捜索にあたった。手がかりを追う中で、シルバーレイク、いや世界には秘密があることに気づく。そしてサムは、大きな陰謀に巻き込まれていくのであった・・・。

【公式】アンダー・ザ・シルバーレイク 10・13公開/本予告

Tシャツ視点で考察!

ピックアップTシャツ

この映画の白眉と言ってもいいシーンで着ているTシャツで、『WALLESTEIN THE MONSTER』という70年代のイタリアのエログロ漫画がモチーフにされています。

着用者の人物像

着用者の主人公サムは、ぐうたらで、嘘つきで、昔のガールフレンドにずっと未練を残していて、犬嫌いな中年男性です。
部屋に飾っているポスターを見るだに、ロック、ホラー/SF映画を好んでいます。「THE CODE BREAKERS」という古代エジプトから現代までの暗号ついての本を読んでいて、テレビの司会者の目線にはメッセージや意味があるんじゃないかと思ってノートにそれを記録していたりと、パラノイアックな一面もある人物です。

あらすじでサムをダブルクォーテーション付きでオタク青年と書いたのは理由があります。
ソフトも含めてほとんどのあらすじでサムをオタク青年ということになっているのですが、僕は違う気がします。(変人ではあると思いますが)
エンターテインメントの世界を志す人たちが多く住む地区であるシルバーレイクの中で、ヒッチコックが好きとかカート・コバーンが好きということは、いたって普通です。
特別何かに詳しかったり情熱をかけているわけではない、この半端な感じこそが肝だと思います。

そして、陰謀に巻き込まれるキッカケとなったサラについても、サムは特に恋に落ちたわけではなく、なんだか妙な失踪に自分の活路を見出したに過ぎません。
このノンシャランさがサムの人物像の幅を広げ、魅力的になっているポイントだと思います。

Tシャツに託されたメッセージ

『アンダー・ザ・シルバーレイク』は、本当に周到な映画です。
多くのアイテムが象徴的に点在しているうえに、宣伝ポスターにも隠しメッセージがあるくらいです。もちろんサムの着ているTシャツも作品の内容と関係しています。ずっとTシャツを着ているのでTシャツ映画と言ってもいいかもしれません。最初に着ていた『ジャングルキング』(ターザンが食人族から美女を救出するゲーム)のTシャツも後のストーリーを暗示しています。
今回ピックアップしたTシャツは特に印象的です。サムについてオタク(特別何かに詳しい)ではないと前述しましたが、『WALLESTEIN THE MONSTER』は英語圏では認知度があまり高くないようなので、ひょっとすると漫画は詳しいのではと思いましたが、くだんのオナニーのシーンでこの類の漫画が「使われていなかった」ので、Tシャツは単にデザインが気に入って買ったものだと思います。やっぱりサムはいい加減な人物なのです。このことから『WALLESTEIN THE MONSTER』のTシャツは、サムの人物像は表すものではなく、作品の描いているテーマを暗示するものと考えられます。

『WALLESTEIN THE MONSTER』は、バットマンのようなオルター・エゴを持っている主人公がホラーヒーロー的に活躍する・・・というあらすじを、暴力とセックスに重きを置いて描いている漫画です。そして一方で、イタリアでエログロといえば頭に浮かぶ、ピエル・パオロ・パゾリーニと同様にサブテキストとして階級闘争を描写しています。この点(階級闘争や格差)が『アンダー・ザ・シルバーレイク』にリンクすると思ったのです。
『アンダー・ザ・シルバーレイク』でも「格差」についてはしつこく描いています。まずは舞台設定がハリウッドというところです。ハリウッドは現実の町であると同時に映画の町でもあります。現実と虚構が入り混じっている場所で、本当ところ何が起こっているのか分からない。そこには我々の「普通の生活」と大きな格差があります。そして、この映画では「普通の生活」の裏面で暗躍するあるコミュニティーが存在します。億万長者やセレブたちで構成されていて、資本主義の「上り」のような催しが行われています。もちろん「普通の生活」からアクセスすることはできません。(サムはサラ失踪の手がかりをつかみ、このコミュニティーに出くわすわけです。)さらに、「上がる」人たちにも公平を欠いているように見られます。4人くらいのグループを作るのですが、グループの主導者はすべて億万長者の男性です。そして主導者以外はすべて女性で、そこにも明らかに格差があるように見受けられます。

これらのことから、『アンダー・ザ・シルバーレイク』では、どちらにも共通する階級闘争や格差についての暗示を『WALLESTEIN THE MONSTER』のTシャツに託しているのだと考えました。
その他にも、オーバードーズしたときにボーイスカウトのTシャツを着ていたり、スカンクに分泌液をかけられたので捨てられちゃうポケットTシャツやパーティーで「イケてんじゃん」と揶揄された寝巻きのTシャツなども象徴的に出てきます。他の登場人物(エキストラ)のTシャツにもイースターエッグ的に隠しメッセージがあるので、やはり『アンダーザシルバーレイク』は稀代のTシャツ映画、もといTシャツ映画の決定版と言ってもいいかもしれません。

THE END

タイトルとURLをコピーしました